貿易実務検定 難解な 貨物海上保険 をやさしく解説!!

資格学校元LEC通関士、貿易実務検定講師のJamesです。

今回は、貿易実務検定C級試験で毎回出題される貨物海上保険の「保険条件とてん補範囲」について教室で講義をするようにやさしく解説をして、本試験に出題される箇所を取り上げてみました。

尚、この記事の説明は長くなっておりますので、お手元にテキストの「保険条件とてん補範囲」の表をご用意の上、じっくりと読んでいただくことをおすすめいたします。

なぜなら、PCで読んでいても読み終わった箇所は見えなくなってしまうので、どこの損害のことだかわからなくなってしまいます。ですから、前記の表を見ながらこの記事を読んで学習していただいたほうが良いと思います。

難しく、わかりにくい箇所はできるだけわかりやすい例をあげてみましたので理解できると思います。

C級本試験で出題される項目を記載していますのでうまく活用してください!!

では、始めましょう!!

注)貨物海上保険の試験範囲は「保険条件とてん補範囲」だけではありません。テキストを参照してください。

貿易取引に関する保険

まず貨物海上保険を学習する前に、
C級で出題される貿易取引に関する保険は何があるのかを抽出してみましょう。

下記の3つになります。

貿易取引に関する保険》

1. 貨物海上保険 ←  今回はこれの「保険条件とてん補範囲」を学習します

2. 貿易保険

3. PL保険

せっかく取り上げたので、少しだけこの3つを説明しましょう。

貨物海上保険

今回学習するのは貨物海上保険の「保険条件とてん補範囲」です。

貨物が船舶で輸送中に損害があった際に、その損害に対して支払われる保険です。

貿易保険

輸出入、海外投資・融資のような海外取引に伴う危険にまつわる金銭的な損害をカバーする保険です。

PL保険

PL = Product Liability =製造物責任

製造物の欠陥により第三者に被害が生じた際に発生する損害賠償をカバーする保険です。
国内PL保険と輸出PL保険があります。

 

以上の3つはもちろんテキストに記載があります。

過去問で出題されているのがどの保険なのかがわかるようにその3つを区別してくださいね。

今回、学習するのは貨物海上保険です。

では、詳しく見ていきましょう!!

貨物海上保険

みなさんが持っているテキストはそれぞれ違うと思いますが、貨物海上保険のところに保険条件とてん補の範囲が書いてある表が恐らくあると思いますので、お手元のテキストを見ながら読んでください。

「最新貿易実務ベーシックマニュアル」では、第7章「貨物海上保険の基本条件」にある表で、

図表7-2「保険条件とてん補範囲比較表」です。(最新貿易実務ベーシックマニュアル 改訂1版)

この表を読み取って、この保険条件ならば、こういう海損を保険でカバーできる、っというようなことが本試験で出題されます。

その「保険条件とてん補範囲比較表」をお手元に置きながら記事を読んでみてください。

てん補とは、損害に対して、保険会社が保険金を支払うことです。
その支払う範囲をまとめた表が「てん補範囲比較表」です。

保険条件とてん補範囲比較表

この表には、

海損の種類どういう損害なのか)と

保険条件(どの損害があったときに保険金額を支払う条件なのか)ということが書いてあります。

では、その海損の種類と保険条件をやさしく説明します。

お手元のテキストの表を見ながらこれからの説明を読んで見てください。

 

海損の種類

海損の種類は大きくわけると下記の3つです。テキストの表と見比べてください。

《海損の種類》

     1. 共同海損

     2. 単独海損

     3. 付加危険

(海損は、英語で Averageといいます)

では、ひとつひとつやさしく解説していきましょう。

共同海損は、損害の種類は1つだけ!!

まず、共同海損です。

共同海損の損害の種類は共同海損だけです。この1つだけなので間違えないように!!

共同海損(General Average)

共同海損とは、船と貨物の両方に共同の危険があった場合に、その危険を避けるために発生した損害の費用を船会社と全荷主が費用を負担する場合です。

例えば、貨物満載の船が強烈な台風によって沈没の危険があった場合、船と貨物の安全のため船長さんが貨物の一部を海に投げ出した場合にそれらの損害は船会社と全荷主さんが費用を負担することになっているんです。

海に放りだされなかった貨物の荷主さんも費用を負担するんです。

たかしくん
たかしくん
えっ、貨物が無事な荷主さんも損害費用を負担するの? 海に放りだされた貨物の荷主さんだけでいいんじゃないの?
そうはいかないんですよ。
海に放り出された貨物があったから、自分たちの貨物が無事だったんです。
ですからみんなで費用を負担しようというルールなんです。
James
James

海に放りだしたのは船長さんの判断ですが、もしもこの判断をしなかったら船が沈没して全貨物に被害が及んでしまったでしょう。

海に放り出された貨物の荷主さんたちは、みんなの犠牲になったんです。

ならば、船会社も含めて全荷主で費用を負担するのが当然ですよね。

これが共同海損です。

単独海損は損害の種類がたくさんある!!

次に単独海損です。

単独海損は、共同海損と違いさまざまな損害の種類があります。
ひとつひとつ見ていきましょう。

単独海損(Particular Average)

単独海損とは、個々の貨物に発生した損害で、損害を受けた荷主が単独で損害を負担するものです。

例えば、あなたの貨物が船上にあり、船の火災で損害をうけたので、荷主であるあなたが単独で保険会社に損害を請求する場合です。

この単独海損は、全損、分損、費用損害があります。

①    全 損(Total Loss)
  貨物の価値が全部なくなってしまう場合です。
  船の沈没、火災等によって貨物の全部が受ける損害です。

②    分 損(Partial Loss)
  全損とは違い貨物の価値の一部が損害を受けること。

③ 費用損害
  救助料、損害防止費用、鑑定費用等

上記①と②を更に説明していきます。

①全損(Total Loss)
単独海損の1つ目。貨物の価値が全部なくなってしまう場合です。

全損には、下記2つがあります。

本試験で出題されます!!全損には2つあります。2つあることその違いが出題されます。

a) 現実全損
    ただちに全損と認定できる場合(船の沈没でびしょびしょ、火災で丸焦げ等)

b) 推定全損
    貨物が全損が確実であるがそれを証明できない場合(例:一定期間の行方不明等)
    または、貨物の修理が可能であるが、修理費用を考慮すると全損のほうが安くなる場合
 (例:修理するために外国に輸出して修理後に日本へ戻す等費用が高額の場合)
    推定全損の保険金請求は「委付」という手続きをとる必要があります。

委付(いふ)とは権利の放棄を指す法律用語です。← 出題されます!!
被保険者が一切の権利を保険会社に移転して、保険金の請求権を行う手続きのことです。

 

②分損(Partial Loss)
単独海損の2つ目。全損とは違い貨物の価値の一部が損害を受けること。

分損にも2つがあります。

a) 特定分損
    特定の事故により発生した貨物の一部の損害

b) その他の分損
     特定分損以外で発生した貨物の一部の損害


a)特定分損

特定の事故とは、下記のようなものです。
・SSBC事故=船のSinking/沈没、Stranding/座礁、Burning/大火災、Collision/衝突
・船の火災、爆発による貨物の損害
・避難港での貨物の荷卸しに起因する損害(消滅や損傷)
・積込み、積替え、荷役中の梱包一個ごとの全損(貨物墜落など)

b)その他の分損
特定分損以外で発生した貨物の一部の損害。
下記のようなものです。
濡れ、高、津、洪水による濡れ損、流出損、その他荒天による分損
*つまり、海水濡れ(濡れ)による損害のことです。←超重要です。
 分損のその他の分損のキーワードは、「海水、潮」です。

後程、説明する付加危険の平常時の「雨、淡水」と比較されて本試験で出題されます。

③費用損害

これまで説明してきた貨物の損害以外に発生する、

救助のための費用

損害を拡大防止のための費用

事故の原因、損害額等を査定するための鑑定費用等です。これも単独海損に入ります。

ここまでをちょっと整理してみましょう!!

たくさんいろんな種類ができてきましたね。

ちょっと整理してみましょう!! お手元のテキストの表を見ながら読んでくださいね。

単独海損は全損分損があり、

全損には、現実全損推定全損。
(船の沈没、火災等により貨物の価値が全く無くなったり(現実全損)と、
貨物が行方不明の場合推定全損等)

分損には、特定分損とその他の分損がありましたね。
(特定の事故により発生した貨物の一部の損害(特定分損)とそれ以外(その他の分損))

費用損害というのは、救助、損害拡大防止、鑑定費用等でしたね。

いいでしょうか。もう少しですので頑張ってください。

では、次にいきましょう。

 

付加危険

共同海損、単独海損に含まれていない損害です。

不可危険は、2つあります。

1. 平常時
    RFWD, TPND、盗難、漏れ損、破損、曲損、へこみ損、汚染損害

2. 非常時
    戦争、ストライキ等

1のわかりにくいものを説明します。
RFWD= Rain &/or Fresh Water Damage 淡水濡れ損
TPND = Theft,Pilferage &/or Non Delivery 盗難、抜荷、不着損害。
汚染損害=例:液状のバラ積み貨物が他の貨物と接触して、汚染、変色した場合の損害です、

*付加危険の平常時のRFWDは、淡水により濡れ損です。←超重要です。
前記の分損ーその他の分損は、海水(濡れ)でした。ここの区別をつけてください!!

付加危険平常時のキーワードは、淡水(雨海水(潮)ですよ。

前述した分損のその他の分損の海水、潮」と区別してくださいね。試験に出題されます!!

中間テストと復習

下記の空欄を埋めてください。

  1. 単独海損は(  ① )と( ② )がある
  2. 全損には、(  ③ )と( ④ )がある。
  3. 分損には、(  ⑤ )と( ⑥ )がある。

*まだわからないのは当然です。わからない方はお手元のテキストを見て穴埋めしてみて下さい。

答:①全損、②分損、③現実全損、④推定全損、⑤特定分損、⑥その他の分損

 

☆簡単にもう一度復習してみましょう。

まず損害には、みんなで費用を負担する共同海損と、
あなたの貨物に損害があったときのように個別に負担する単独海損がありました。

共同海損の損害の種類は共同海損のみです。

単独海損は、全部の価値がなくなった全損一部の破損分損がありました。

全損には、火災で丸焦げのような現実的に誰が見ても証明できる現実全損と、
貨物の行方不明など全損はわかるけど、証明ができない場合の推定全損がある。

更に、分損には船舶の特定の事故により発生した貨物の一部の損害である特定分損と、それ以外のものをその他の分損というように分けている。

読んでるだけではなかなか覚えにくいかと思いますので、下記のようにノートに図表でまとめてみるといいかもしれませんね。

 

保険条件

これまで、海損と損害の種類を勉強してきました。

ここでは、それらの損害がどの保険条件ならばカバーできるかということを学習してきます。

まず本試験ではの頻出出題箇所をあげてみます。

  1. 新ICCの〇〇保険条件は、旧ICCのどの保険条件に相当するか?
    (例:新ICC(A)は、旧ICCのA/R(All Riscs)にほぼ相当する。答:正しい)
  2. A/Rでカバーされるが、WAではカバーされない損害は?
  3. WAではカバーされるが、FPAでカバーされない損害は?
  4. 戦争、ストライキはどの保険条件でも免責(ただし特別約款として付保可能)。

 

では、保険条件を見ていきましょう。

保険条件は3つあります。

まずその3つの新ICCと旧ICCを記載します。

   新ICC          旧ICC

  1. Institute Cargo Clause(A) = A/R(All Riscs) 全危険担保
  2. Institute Cargo Clause(B) = WA (With Average) 分損担保・単独海損担保
  3. Institute Cargo Clause(C) = FPA(Free from Particular Average) 分損不担保・単独海損不担保

*新旧ICCでカバーされなくなったところがあります。テキストでご確認してください。

保険条件の本試験対策

先程の本試験頻出箇所に対応できように学習していきましょう。

本試験頻出箇所
1.新ICCの〇〇保険条件は、旧ICCのどの保険条件に相当するか?
この問題に対応するためには上記の新旧ICCの比較を覚えれば対応可能です。
例)新ICC(A) = A/R(All Riscs)
2,3 各保険条件でどの損害ならば保険金額を支払ってくれるのか?ということが出題されます。
頻出に出題されているのは、例題にもあるように各保険条件でカバーされる損害の違いです。
前記、「頻出出題箇所」にも記載した以下のとおりです。

a)A/Rでカバーされるが、WAではカバーされない損害は?
答:付加危険の平常時の損害です。

頻出キーワードは、「雨、淡水」です。
(RFWD,TPND等)これはWAではカバーされません。

注)付加危険の平常時の損害は、雨、淡水が原因ではない場合もありますが、頻出に出題されている問題には前記キーワードを使用していることが多いです。

b)   WAでカバーされるが、FPAではカバーされない損害は?
答:分損、その他の分損=特定分損以外の分損です。
頻出キーワードは、「海水濡れ(潮濡れ)」。これはFPAではカバーされません。
4.  戦争、ストライキはどの保険条件でも免責(ただし特別約款として付保可能)。
戦争、ストライキはどの保険条件でもカバーされていませんが、追加契約として保険をかけることは可能です。

保険条件の違いは頻出問題!!

ここは頻出問題なので覚えておいてください。

3つの保険条件のうちカバーされる損害の数が一番少ないのは、FPAです。

ここからが重要です。

あとのWAそしてA/Rは、1づつカバーされる損害の数が多くなっていきます。

・FPA + 特定分損以外の分損(海水濡れ(潮濡れ)等) = WA

・WA + 付加危険の平常時の損害(雨、淡水等)= A/R(All Riscs)

・カバーされる損害の数が一番多いA/Rでも戦争、ストライキは、
保険でカバーは無し。(追加契約が必要)

上記は頻出問題ですので覚えておいてください。

 

保険でてん補されないもの

通常の保険でカバーされないものについてテキストに記載がありますが、わかりにくい、イメージがわかないものだけを例をあげて説明します。

①貨物の固有の瑕疵又は性質による損害
金属のさび農産物の成熟腐敗等は通常の保険ではカバーできません。

②通常の自然の消耗による損害
液体貨物の気化による減少は通常の保険ではカバーできません。

*その他、通常の保険ではカバーされないものがありますのでテキストを参照してください。

 

まとめ

貨物海上保険の「保険条件とてん補範囲比較表」についてわかりやすく解説してみました。

この表はたくさんのことが書いてあるので勉強するのもゾッとすると思います。

この保険条件だとこういう貨物の損害をてん補できるということが書いてあることが、少しでもわかっていただけましたでしょうか。

一度に全部覚えるのは無理があります。

今日は、「保険条件」

明日は、「てん補の範囲」

明後日は本試験問題対策などというこまめに分けて復習しながら学習してみてください。

本年5月のC級試験はWEB試験での実施対応と発表がありました。

4月22日(水)にWEB試験方法のお知らせがあるとのことですので発表を待ちましょう。

ただ、貿易実務検定の試験は無くなりませんので、コツコツと勉強していきましょう!!

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