通関士と貿易実務検定 どう違うの? 難易度, 合格率、就職等を徹底比較

こんにちは、元LEC通関士、貿易実務検定の講師のJamesです。

今回は、通関士と貿易実務検定ってどこがどう違うの?
難易度、合格率、転職、就職等あらゆる角度から検証してみます。

これから2つのうちどちらかを選択して受験してみようという方は、ぜひご参考にしてください。

通関士と貿易実務検定 どう違うの?

通関士試験の合格発表が終わると資格学校では、翌年度の試験に向けての受講説明会、ガイダンスが始まります。

そのガイダンスで「通関士と貿易実務検定との違いは?」を数回開催いたしました。

ガイダンスのテーマになるほど「通関士と貿易実務検定の違い」がよくわからないようですので、今回は通関士と貿易実務検定の違いについてあらゆる角度から検証しました。

たくさんの項目を検証をいたしましたので、気になるところだけ上記目次からピックアップしていただいてもかまいません。

読んでいただいたあとに、「なぁるほど、違いはそうだったのかぁ」と思っていただければ幸いです。

では、早速始めましょう!!

通関士試験、貿易実務検定試験はいつから始まったの?

(上記写真は横浜税関)

≪通関士試験≫

関連ある業務等を簡単に時系列に並べると下記のようになります。

1901年 通関業者の前身である「税関貨物取扱人法」施行
1966年 関税の申告納税制度を実施
1967年 通関業法施行、通関士試験実施

えらい昔の話ですね。
簡単に言いますと、税関が取り扱う貨物が多くなってきたので1901年に通関業者の前身である「税関貨物取扱人」に対して法を定めて責務を規定する。

1966年には関税を支払う者が関税を自らが算出して輸入申告(申告納税制度)をすることになりました。

1967年、輸入代行業者である通関業者において税関申告の専門家をおくために通関士試験を実施する。また通関業者についても法律で規定するようになりました。

このような流れがあり、1967年に第1回の国家試験通関士試験が実施されています。
ですから既に半世紀、50回以上の試験が実施されています。

ちなみに第1回の合格率は20.3%です。

第1回目の試験は過去問もないし、試験の出題頻出箇所がわからなければ資格学校も講座を開催できないでしょうし、そもそも1967年では通関士の資格学校なんてないと思います。恐らく受験生は大変だったと思いますよ。

それを考えると、今はいろんな情報が入ってくるので恵まれていますよ、っと言いたいところですが、恵まれている分、試験問題も難しくなっているのが現状ですよね。
ですから、今も昔も同じように受験生は苦労しています。

 

≪貿易実務検定試験≫

民間の日本貿易実務検定協会が主催している貿易実務検定試験は通関士と比べると歴史が浅く、難易度が高い順にA-C級の3段階があり、各級は下記のように開始されました。

・A級 2000年開始(2019年7月  18回終了)
・B級    1998年開始(2020年3月  63回終了)
・C級     同年開始(2020年5月   83回終了)

貿易実務は大学の授業になっているくらいで歴史もあるのですが、この試験自体はまだ10年ほどです。
このような貿易に関する民間の試験はこれまで数回発生しているのですが、受験生が集まらなかったせいか、あるいは試験内容の精度と合格後の世間における認知度がいまひとつだったせいか全て消滅してしまい、現在残っているのは上記の試験のみです。

年間の試験回数

通関士と貿易実務検定各級の1年間に何回試験があるかを見てましょう。

≪通関士≫
国家試験である通関士は1年に1回だけです。
後述しますが合格率が15%位ですので合格基準点に達するのも難しく、なおかつ試験が年1回だけですので試験日は受験生にとってその年のスーパーウルトラビックイベントです。

≪貿易実務検定≫
貿易実務検定は、ご覧のとおりどの級も年に複数回ありますので通関士試験の年1回の試験と比較するとまだ緩い感じがしますね。

合格率

通関士と貿易実務検定各級の直近5回の平均合格率を見てましょう。

≪通関士≫
通関士の合格率ですが、2017年は21.3%の合格率がありましたが、ここ数年は10-15%以内に収まっています。

≪貿易実務検定≫
貿易実務検定C級の合格率ですが、
2019年7月は55%でやや低めの合格率でしたが、次の2019年10月は72%でかなりの高い合格率になっています。ただし、ここ数回の合格率は60%後半くらいに収まっています。

合格基準点

何点で合格できるのでしょうか?

≪通関士≫
通関士試験は3科目があり、各科目が満点の60%達している必要があります。
3科目の合計の60%ではないので要注意です。
ですから、各科目の得点が満点の①65%, ②60%, ③55% =合計60%では合格しません。
③が60%以下だからです。各科目が満点の60%に達している必要があります。

≪貿易実務検定≫
貿易実務検定A級は試験の都度合格基準点が変わります。
B級は3科目の合計70%以上、C級は2科目の合計80%以上ということになります。

通関士と違い、各科目が満点の70%以上ということではなくて、3科目の合計が満点の70%以上であればB級は合格するということです。

ちょっと気になるのですが、B級は満点の70%、そしてC級は満点の80%とかなり高得点ですよね。そんなに取れるの、っと思ってしまいますよね。

それができるんです。その下記に記載してあるので時間ある時に読んで見てください。

C級試験のネタバラシをします!!わずか2週間で合格できます!!

上記のブログの「2. なんでわずか2週間で合格できるの?」を読んで見てください。

試験科目

≪通関士≫

3つの試験科目があります。

全ての試験科目は全て法律を元に問題が作成されています。

まず、通関業者は税関から許可をもらって仕事をしています。
通関士は通関業者の中で働く通関書類の審査等をする人達です。
そしてその通関書類は税関へ提出します。

税関の仕事は法律に基づいて業務を行っております。おまわりさんみたいなものです。
通関業者が通関書類を提出するのは税関です。ならば税関は法律に沿って通関書類を審査して問題がなければ輸入、輸出の許可等を行います。

ですから、通関士試験の3科目は全て法律に沿った試験となっています。

通関業法ー通関業者の規制を定める法律についてから出題されます。
関税法、関税定率等ー外国貨物、保税地域、関税の算出方法等についての法律から出題。
通関書類の作成等ー輸出、輸入申告書を作成させる等、実践に沿った試験内容ですが、
3科目のうちこの科目が一番難関になっています。

 

≪貿易実務検定≫

A級とB級は3科目。C級は貿易実務と貿易英語の2科目のみとなります。

試験内容は、下記のとおりです。
貿易実務ー次に説明する貿易実務の仕事に沿ったもの、
貿易マーケッティングー貿易と名前がついていますが通常のマーケッティング理論と全く
かわりはなく、それに貿易の輸出、輸入マーケッティングが少々加わったという感じで
す。
貿易英語ー和訳、英訳、英単語等の問題がA-C級についてランク分けされて出題されてい
る。日頃、TOEIC高得点の方はかなり有利です。しかしながらTOEIC高得点を取っていな
くてもコツさえわかれば合格可能です。

独学は可能?

≪通関士≫

独学で合格している方もいます。
通関業法と関税法、関税定率法等の2科目については独学でなんとか可能かもしれません。
しかしながら、3科目目の通関書類の作成については独学ですとかなり時間がかかります。
なので、初めは資格学校の講座を利用したほうが早く合格まで到達できます。

また、通関士試験は法律の試験です。法律は毎年変更箇所があります。これは資格学校の法改正講座を利用したほうが早く正確に覚えることができますので、資格学校でこれだけの講座を利用したほうがよいです。

≪貿易実務検定≫
C級は独学可能です。
英語の問題もありますが、英文の量も少ないので中学程度の英語の能力でも可能です。
このブログでも記事にしています。かなり効果的ですのでご覧ください。

貿易実務検定 英語が苦手な方へ

A,B級も英語次第だと思いますが、貿易英語は今のところ講座がありません。
ですから、独学になります。
B級英語はC級と比較すると難易度も英文の量も違うのでトレーニングが必要です。
A級英語は英作文があるので同様に正しい英文を作成するためのトレーニングが必要です。

資格学校ですが、試験主催者の貿易実務検定協会でA級上級講座というのがありますが、残念ながらこれには貿易英語は含まれていません。
貿易実務検定協会 貿易実務上級講座(A級)(2020年10月試験対策 WEB配信)

英語の能力というのは、短期間ではあまり変わりません。
ですから、合格するためのポイントすなわち得点を取る為のポイントをついて短期間で合格できる能力を身につけることが大切です。

また、貿易実務の経験が無くてテキストに記載してあることがイメージがつかみにくいということであるならば一度資格学校の講座を受講してみると早く覚えることができますのでご利用してみてください。
貿易実務検定協会 B級通信講座

ちなみに独学と通学のメリット、デメリットも記事にしていますでのご参考まで。
【2021年】 貿易実務検定C級試験 合格率,難易度, 就職でのメリット

科目免除

通関士も貿易実務検定も科目免除はございます。下記のとおりです。

≪通関士≫

通関業者の通関業務を5年以上勤務していた場合、3科目のうちの一番難関な試験が免除されます。これは有意義につかったほうがいいですよね。

そして15年勤務の場合は、なんと2科目免除されまして、通関業法1科目だけの試験で合格できます。これは絶対見逃せません。

≪貿易実務検定≫

C級とB級について免除科目があります。
C級の貿易英語そして、B級のマーケッティングが免除科目に該当しています。

通関士と貿易実務の仕事内容

通関士と貿易実務の仕事内容をご説明いたします。

貿易事務は同時並行で動く「モノ・カネ・カミの流れ」を管理するお仕事  (引用:Pasona Staff HPより)

≪貿易実務≫

貿易実務の業務範囲は①から⑮までです。
登場人物は、輸出者、輸入者、銀行、保険会社、船会社、混載会社、通関業者、倉庫会社等であり、さまざまな会社が関連して貿易取引が行われています。
それぞれの会社によって業務内容が異なりますが、貿易実務の範囲はとても広いです。

【仕事の流れ】
輸出者(商品を作って売る人)と輸入者(商品を買う人)の売買契約から始まって、輸出者の輸出通関、船積み、輸出者が船積み書類を銀行に渡して、銀行よりお金をもらう。

そして今度は、輸入者が銀行にお金を払い、銀行より輸入通関に必要な船積み書類をもらい、その書類を持って輸入通関をする。許可になったら船会社に必要な書類をもって貨物を引き取りに行く。こんな感じです。ですから売買契約から貨物引き取りまでですね。

【業務内容】
海外との交渉、受発注、通関書類の作成、通関手配、船積み手配、船積み書類の作成、買取書類の作成、代金支払い手続き等々です。

【特徴】
言語や文化が異なる国との取引となるため電話、メール、書類等で語学力がある程度必要となります。

細かく見てみるとまだまだ貿易実務の内容はありますが、とりあえずこのくらいであるとお考えください。

≪通関士≫

通関士の仕事はこの図でいうと、輸出通関の④,⑤、そして輸入通関の⑫,⑬のみです。

たかしくん
たかしくん
えっ、通関士の仕事ってこれだけしかないの?
貿易実務と業務範囲がずいぶん違うね。これで合格率15%なの?
通関士の仕事はこれだけではありません。法律を元にした通関業務等でとても奥が深いんですよ。だから難易度が高くて、合格率が低いのです。
James
James

前記「試験科目」で通関業者と通関士の仕事を簡単に記載しましたがもう少し深く掘り下げてみましょう。

≪通関業者≫
メーカー、商社などから依頼を受けて税関へ提出する輸出入貨物に関する書類等の通関業務の代行を請け負う会社です。通関業者が通関業務を行うには税関の許可が必要です。
通関業者は通関士を置かなければなりません。
つまり、輸出者と輸入者の代わりに法律を熟知している通関業者が代行して輸出入貨物等の書類を作成して税関へ提出するということです。

≪通関士≫
前記の通関業者において財務省管轄の国家試験に合格した者で税関の確認を受けた者を通関士といいます。
通関士試験に合格しただけの者は「通関士資格保有者」といいます。
仕事内容は、税関に提出する輸出入貨物に関する書類等の提出する書類を審査したり、輸出入者の代わりに税関に対して主張、陳述することです。
通関士は税理士、行政書士等とは違って、独立して通関業務を行うことはできません。
前述のように通関業者に属することが必要です。

≪通関士の語学力≫
相手が税関ですので英会話は必要ありません。
但し書類は外国語です。輸入貨物について海外で作成したものが日本へ送付されてくるのでその外国語の書類を読み解き、商品確認と書類内容確認ができることが必要になります。

通関業者の中には、仕事内容により現地とのやりとりのために英会話、英文メール等を作成する部署もあります。

以上のように貿易実務の仕事は通関士に比べると範囲はとても広いです。
一方、通関士の仕事は貿易実務と比べると範囲は狭いですが、奥が深くて内容が濃いため試験の難易度が高くなっているのが現状です。

就職にはどちらが有利?

よく通関士と貿易実務検定のどちらが就職に有利ですが?というご質問をいただきますが、これについては、どちらも有利ですとお答えしています。

通関士を必要としている職場ならば通関士の資格は大変有利ですし、貿易実務を行う職場ならば貿易実務検定の資格を持っていることはとても有利になるからです。

従いまして、各職場で何を必要としているかの違いですね。

通関士は国家試験であって難易度も高いので資格を持っているとステイタスになるので就職にも有利だろうと思いますが、そもそも入社したい会社で通関士を必要としているのか?ということが一番重要です。

まず、入社したい会社が何を必要としているのか?

その必要としていることが自分でできるのか?

以上、2点が会社を決める上でとても重要なことです。

まとめ

通関士と貿易実務検定の違いをたくさんの項目より検証してみました。

同じ貿易関係の資格ですが、違うところがたくさんあることがお分かりいただけましたでしょうか。

私は現在通関士として通関業務に勤務しています。
しかしながら、通関業者も通関業務だけでなくて貿易実務も行っております。
そこでは通関士としての知識ではなくて、もちろん貿易実務検定で得た知識を持って仕事をしています。

このように資格はうまく使う限り、持っていて損のないものです。

みなさんも、まずはなにをやってみたいのか、どんなところで働きたいのかを明確にして、その目標に近づくために必要な資格の取得を目指してみてください。

この記事を最後まで読んでいただいたみなさんは、やりたいことについて意欲があるので必ず目標を達成することができます!!

最後まであきらめずに頑張っていきましょう!!

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です