貿易実務検定 過去問からみるインコタームズの勉強法
資格学校元LEC通関士、貿易実務検定講師のJamesです。
今回は、インコタームズが貿易実務検定C級試験でどのように出題されていて、どのように勉強したらインコタームズを覚えることができて得点がとれるのかをお伝えしていきます。
2020年版インコタームズについて本試験に出題されそうな項目についてもお知らせしていますので
ご覧になってください。
では、早速始めましょう!!
目次
過去問からみるインコタームズの勉強法
まず初めにお伝えしますが、
今回の記事には、
「インコタームズとは何か?」
「省略語の意味は?」
「危険負担と費用負担の範囲はどこまで?」
など、テキストに記載してある説明は省略いたします。
お手元のテキストとすり合わせながら記事を読んでみてください。
本試験でどのように出題されているの?
本試験でどのように出題されているかを過去問より抽出しましたので見てください。
インコタームズとはなにか?
そもそもインコタームズとはなんなのか?ということが下記のように出題されています。
- インコタームズを使う場合、2010年版の使用が義務づけられているわけではない。
(正):そのとおりです。 - 信用状取引を行う場合インコタームズは信用状統一規則により必ず採用しなければならない
(誤):法律や国際協定ではないため採用するか否かは契約当事者の自由である。
インコタームズは、貿易条件の国際ルールとして統一解釈を行うことで、売買する当事者間の貿易取引上の紛争や摩擦をさけることを目的に(国際商工会議所、国際商業会議所)によって定められているものであるが、所有権の移転については(規定している、規定していない)
答:国際商業会議所、規定していない
(引用:貿易実務検定C級試験問題集)
これらは、テキストの「インコタームズとは」という基礎的なところから出題されています。
さほど難しいところではありません。
テキストを読めば理解できますが、
まぎらわしい国際商工会議所、国際商業会議所は区別をつけましょう。
国際商業会議所(ICC:International Chamber of Commerce)ですね。
所有権の移転については規定していない ← 頻出問題です。
危険負担、費用負担の範囲
インコタームズではここがポイントですね。
実際に実務を行っている際に混乱しないように出題されています。
まずは危険負担、費用負担の範囲を理解して、それらが関連する貿易取引書類でインコタームズが、どのように反映されていくのかというような問題が出題されています。
(例:下記《正誤選択》-1)
出題例を挙げていきます。
- 貿易取引条件がFOBの場合、通常B/L上の運賃表示は、”FREIGHT PREPAID”と記載される。
(誤):FOB条件の場合、運賃、保険料とも輸入者が負担する条件である。
このため運賃は輸入地に到着してから支払われるので”FREIGHT COLLECT”となる。 - コンテナ船で運送される運賃・保険料輸出者負担の貨物に適した貿易条件は「CIP」である。
(正)そのとおりです。在来船の場合は「CIF」ですね。
(引用:貿易実務検定C級試験問題集)
1は、FOBの費用負担を理解しているか、そしてそのFOBがB/L上でどのように反映されていくのかという応用問題ですね。
2は、コンテナ船と在来船でのインコタームズの使いわけについてです。
ところで在来船ってわかりますか?
コンテナに貨物を詰めて輸送するのがコンテナ船、
貨物を直接船に積み込むのが在来船です。
「コンテナ船 画像」「在来船 画像」一度見てください、イメージが湧きますよ。
-
- 貿易条件が「CIF NEW YORK」と表示されていたら保険証券は(輸入地側、輸出地側)で発行されることになる。
答:輸出地側。CIFは、COST(費用)、INSURANCE(保険料)、FREIGHT(運賃)が輸出者負担する。
輸出者が保険申込みをして、保険料を払い、保険証券を入手する。
保険証券は裏書をして輸入者に送付して輸入者に権利を譲渡する。 - 大阪からNEW YORKに向けての輸出において貿易条件がCIPの場合、各書類上の貿易条件の表示方法は(CIP OSAKA、CIP NEW YORK)となる。
答:CIP NEW YORK。NEW YORK向けなのでNEW YORKまでの運賃、保険料が輸出者負担であることを各書類で表示するためにCIP NEW YORKとします。 - 日本の輸出者Xがアメリカの輸入者Yと次に掲げる2010年度版インコタームズで契約した場合に貿易条件からみて一般的に輸出者Xの費用負担が最も大きい条件はどれか。
①EXW ②FOB ③DDP
答:③DDP。関税込み持ち込み渡し。輸出者が仕向国における輸入通関、関税納付、指定場所までの荷物の持ち込みまでの輸送に伴う費用と危険を負担するので回答はDDPである。
- 貿易条件が「CIF NEW YORK」と表示されていたら保険証券は(輸入地側、輸出地側)で発行されることになる。
(引用:貿易実務検定C級試験問題集)
危険負担と費用負担についてはこのように出題されています。
FOBの危険負担がどこまでか? CIFの費用負担がとこまでか?という単純な問題ではなくて、
それらを理解した上で、
関係書類はどこで発行されるのか?
関係書類にOSAKA、NEWYORKどちらを書けばいいの?
輸出者の費用負担が大きいのはどれ?
などを選択する応用問題が出題されています。
ですから、まず危険負担、費用負担の範囲を覚えるのが必要です。
輸出、輸入の税関への申告価格
日本の税関への輸出申告と輸入申告の場合に、どのインコタームズを使用するかを問われています。
答:CIF, C
(引用:貿易実務検定C級試験問題集)
この問題も頻出ですので覚えておきましょう!!
輸出申告は、FOB価格で税関へ申告。
輸入申告は、CIF価格で税関へ申告。
たかしくんの疑問は理解できます。
あまり深入りはせず、簡単にご説明します。
税関への輸入申告価格は、
原則、「輸入港到着までに現実に支払われた又は支払われるべき価格」なんです。
保険料を輸出者も輸入者も支払っていないならば輸入申告価格には加算しません。
なぜなら、現実に支払われていないからです。
ここまでくると通関士の試験になりますので、
貿易実務検定C級では、
輸出ーFOB価格
輸入ーCIF価格で税関へ申告する、
ということを覚えておけば本試験に対応できます。
インコタームズの覚え方
これまで本試験でどのように出題されているかを見てきました。
ある程度、出題傾向がおわかりいただけたかと思います。
そこで今度は本試験に対応できるインコタームズの覚え方をお伝えしておきましょう。
インコタームズは輸出者が主体!!
インコタームズは、
輸出者(売主)を主体に考えると費用負担、危険負担を理解できるようになっています。
例えば、
CIF の場合、輸出者(売主)が輸入港までの保険料と運賃を負担する。
DDP の場合、輸出者(売主)が輸入地の指定場所まで持ち込み、輸入通関と関税納付も負担する。
これを押さえておけば、理解度が早まると思います。
忘れないでください。「輸出者(売主)が~」ですよ!!
危険負担と費用負担の範囲が違うのはCグループだけ!!
えっ、なんだって!? っと思うでしょうが、
お手元のテキストで一度確認してみてください。
危険負担と費用負担の範囲が違うのはCグループ(CFR,CIF等)だけです。
残りのE,F,Dグループは危険負担と費用負担の範囲は同じです。
Cグループの危険負担は、FCA、FOBと同じです。
・CPTとCIP(コンテナ船) ⇒ FCAと危険負担が同じです。
・CFRとCIF(在来船) ⇒ FOBと危険負担が同じです。
最初の「F」は、FREE=免責の意味!!
インコタームズの最初の単語「F」はFREE=免責を意味します。
最初の「F」以降の2文字の行為を行った時点で、輸出者は危険負担と費用負担の責任がなくなり、あとは輸入者の負担となります。
例えば、
FOB = 輸出者が貨物を本船に積み込んだら(On Board)、危険負担も費用負担も責任がなくなります。
FCA = 輸出者が買主(輸入者)の指定した運送人(Carrier)に貨物を引渡したら、危険負担も費用負担も 責任がなくなります。
一番目の「F」は免責の意味です。くれぐれもFREIGHT(運賃)と間違わないように!!
2番目、3番目の「F」は運賃、運送費込み!!
インコタームズの2番目、3番目に「F」があったら、輸出者が運賃、運送費を負担します。
先程、インコタームズの主体は輸出者であると説明しましたね。
ですから、
CFR = 輸出者が運賃を負担する。
CIF = 輸出者が運賃を負担する。
C、Dグループは全て運賃、輸送費込み
C、Dグループは全て、輸出者が輸入地までの運賃、運送費を負担します。
「I」があったら輸出者が保険料を負担
インコタームズで「I」(アイ)は2番目にしかでてきませんが、輸出者が保険料負担です。
「I」(アイ)=INSURANCE(保険)
CIF =輸出者が運賃、保険料を負担
CIP=輸出者が輸送費、保険料負担
Dグループには気をつけろ!!
Dグループの危険負担と費用負担の範囲はまぎらわしいので本試験でよく出題されます。
各インコタームズの荷卸し作業と輸入通関業務を誰が行うかが問われます。
Dグループを表にまとめました。2020年版インコタームズで新設されたDPUを加えておきます。
荷卸し作業 | 輸入通関業務 | |
DAT | 売主 | 買主 |
DAP | 買主 | 買主 |
DDP | 買主 | 売主 |
*DPU | 売主 | 買主 |
*2020年新設されたものです。
略語で覚えるのは無理がある!!
インコタームズの3文字の略語だけで危険負担、費用負担を理解しようとするのは無理があります。
ちょっと時間がかかるかもしれませんが、省略前の英語と日本語で覚えていたほうが理解がしやすいし記憶にも残ります。
それと、3つのアルファベットの省略語はインコタームズ以外でも貿易用語で出てきます。
本試験では語群選択式でまぎらわしい3文字略語が選択肢の中に含まれていることがあります。
その際に省略前の英語を覚えておけば間違えないようにすることができます。
インコタームズ以外の3文字省略語とは下記のようなものです。間違わないように!!
CAF, CLP, DDC, FCL, FPA等
インコタームズは図解で覚えろ!!
最初に学習する際は、図解で勉強してみると危険負担と費用負担の範囲がよくわかります。
どうしても言葉だけで覚えるとたくさんの種類があって記憶に残りにくいですよね。
そこでオススメのインコタームズ解説HPをご紹介します。
ふみさんという貿易会社に勤務しているOLさんのブログです。
日常の貿易事務の記事に加えてインコタームズについて独自のイラスト入りでやさしく説明してくれています。とてもわかりやすく、なんとゴロ合わせもありますので参考にしてみてください。
こちらです 👇 👇 👇
2020年版インコタームズ
2020年版インコタームズについて本試験に出題されそうな項目についてお知らせします。
- 2010年版と同様に2クラス11規則
- DATが廃止
- DPUが新設
*DATが廃止といってもまだ使用することはできますので試験対策としては覚えておきましょう。
*新設されたDPUについてご説明します。
DPU=仕向け地荷降し渡し(Delivered at Place Unloaded)
指定仕向地で物品が輸送手段から荷卸しされた後、買主の処分に委ねられた時、危険負担は買主に
移転します。輸入通関業務については買主負担となります。。
前記のDグループの表にはDPUを記載しておきましたので覚えておいてください。
まとめ
インコタームズは、覚えるのが大変そう、わかりにくい、めんどくさそうなので勉強が後回しになってしまう方が多いようです。
今回は、まず本試験に出題されているインコタームズを集めてみました。
どのように出題されるのかを理解していただけたかと思います。
そして次に対策ですが、インコタームズの中からある一定の仲間を抽出して覚えやすいようにグループにまとめてみました。
これらを覚えるのは時間がかかるかと思います。
ですから、一日1グループづつ覚えて、あとは反復そして過去問を解いて本試験の問題になれるようにしてみてください。
引き続きがんばっていきましょう!!